ザッツ・ファンキー/ベニー・ゴルソン -1990年代



メセニー・ファンには、あまりにポップであるがゆえについ見過ごされがちな95年リリース作品。R&Bテイストを取り入れており、今となってはこの”軽さ”がかえってPMG史上でも貴重な瞬間だったのかもと思えてくる。「アンド・ゼン・アイ・ニュー」などはそのまま歌モノにしちゃえそうだし。
パット・メセニー (g,g-synth)、ライル・メイズ (p,key)、スティーヴ・ロドビー (b)、ポール・ワーティコ (ds)、デイヴィッド・ブラマイアーズ (vo他)、マーク・レッドフォード (vo他)、アーマッド・マーサル (perc)
1990年代のクラブ・ミュージックを掲示したハンコックのエレクトリック作品。1974年の『ヘッド・ハンターズ』、1983年の『フューチャー・ショック』に続いて時代を震撼させたクラブ・ミュージックの傑作。斬新なアイデアとテクノロジー。これらを有機的に結びつけたことで、再びポピュラー・ミュージック・シーンの話題を一身に集めた話題作。
13. モジュバ (リミックス・ヴァージョン)
ハービー・ハンコック(synth, p, el-p, key) ウォレス・ルーニー(tp) ベニー・モウピン(ts) ワー・ワー・ワトソン(g) ビル・サマーズ、アイアート・モレイラ(per) ウィル“ロック”グリフィン
チックが10年ぶりに放った94年発表のソロ・ピアノ作はファン待望のスタンダード曲集。
折々に制作してきたチックのソロ作は自作曲が中心だった。よく知られたスタンダードやセロニアス・モンク、バド・パウエルの名曲集は初めてのプロジェクト。少年時代に故郷で父親とよく演奏したエピソードも興味をそそる。
1ラッシュ・ライフ
2ジス・ニアリー・ウォズ・マイン
3イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー
4マイ・シップ
5時さえ忘れて
6モンクス・ムード
7オブリヴィオン
8パノニカ
9サムワン・トゥ・ウォッチ・オーヴァー・ミー
10アーマンドズ・ルンバ
11ブルース・フォー・アート
12星影のステラ
13アンナ
14アイ・ウォント・トゥ・ビー・ハッピー
15スマイル
チック・コリア(p)
我が国におけるスイング・テナーの隠れたる第一人者、尾田悟が、ハンク・ジョーンズ、スライド・ハンプトンと組んで作った名作。アメリカにスコット・ハミルトンやハリー・アレンがいるなら、日本には尾田悟がいる。
1. バーニーズ・チューン
2. ゼア・ウィル・ネヴァー・ビー・アナザー・ユー
3. リトル・スエード・シューズ
4. ボディ・アンド・ソウル
5. スクラップル・フロム・ジ・アップル
6. イージー・リヴィング
7. エレヴェーション
8. AK300
9. ジャスト・フレンド
尾田悟(TS)スライド・ハンプトン(TB)ハンク・ジョーンズ(P)アンディ・マッケイ(B)ルイス・ナッシュ(DS)
新世代のピアニストの雄、椎名豊が放った充実のリーダー第2作。余計なものは何もない、メロディーとスイングのエッセンスを抽出したようなピアノを弾く彼の音楽性を、全面的に信用する。
1. ヒッティン・ザ・トレイル
2. フロム・ザ・スピリット
3. プレリュード・トゥ・ア・キス
4. グリーン・チムニーズ
5. リル・ダーリン
6. 歌を忘れて
7. ラヴァー・マン
8. リヴァー
9. スリー・リトル・ワーズ
椎名豊(p) レジナルド・ビール(b) ハーリン・ライリー(ds)
オーチャードにおけるウイズ・ストリングス・コンサート第3弾は、何とプレイズ・パーカー。そう、かの名盤「パーカー・ウイズ・ストリングス」への果敢なる挑戦である。ナベサダのプライドを賭けた音が光彩を放つ。
渡辺貞夫(as) ラッセル・フェランテ(p) マーク・ジョンソン(b) ピーター・アースキン(ds)
1. スプリング・キャン・リアリー・ハング・ユー・アップ・ザ・モースト
2. ベター・デイズ
3. マイ・フェイヴァリット・シングス
4. ファイアフライ
5. フォーギヴ・ミー
6. ディーズ・シングス・ユー・アー・トゥ・ミー
7. トリステ
8. アイ・ドント・ウォント・トゥ・ラヴ・ウィズアウト・ユー
9. オールド・フレンド
10. ヒアズ・トゥ・ユー
11. マイ・シップ
12. ラウンド・ミッドナイト
カーメン・ランディ(vо)、アー二―・ワッツ(ts)、ゲイリー・ハービグ(fl,cl,ss)、シダー・ウォルトン(p)、ジョン・クレイトン(ac-b)、ネイザン・イースト(el-b)、ラルフ・ペンランド(ds)、ジェレミー・ラボック(arr,cоnd)&27ピース・ストリングス
10年に一人の逸材、ペイトンのファースト・リーダー作。サイドマンとしての活躍ですでにその実力は折り紙付きだったが、これを聴くと改めて彼の音楽力の豊かさがわかる。衒いのない率直な表現に無限の可能性を見る。
1. イン・ザ・ビギニング
2. ユー・ステップト・アウト・オブ・ア・ドリーム
3. フェア・ウェザー
4. マイアズ・メロディー
5. イット・クッド・ハプン・トゥー・ユー
6. リトル・リ・リ
7. フロム・ジス・モーメント・オン
8. ロンダズ・スマイル
9. ザ・スリープウォーカー
10. ブルース・フォー・マイ・ブラザー
11. テイキング・ア・チャンス・オン・ラブ
12. トゥ・ジ・エッセンシャル・ワン
ニコラス・ペイトン(tp)、マーク・ホイットフィールド(g)、モンテ・クロフト(vib)、マルグリュー・ミラー(p)、レジナルド・ビール(b)、ルイス・ナッシュ(ds)
70年代のハンコック・グループでは、おどろおどろしいブラック・パンクの片棒を担いでいたヘンダーソン。しかし本作ではクールで叙情的な一面をアピールしている。スモーキーなサウンドの向こうにNYが見える。
1.飾りのついた四輪馬車
2.アイ・リメンバー・クリフォード
3.人力車
4.オリロクイ・バレイ
5.星に願いを
6.ファントムズ
7.オン・グリーン・ドルフィン・ストリート
8.イフ・ワン・クッド・オンリー・シー
エディ・ヘンダーソン(tp,flh)、グローヴァー・ワシントンJr.(ss)、ケヴィン・ヘイズ(p)、ジョー・ロック(vib)、エド・ハワード(b)、ルイス・ナッシュ(ds)
ブルーノートからゴンサロ・ルバルカバ、大西順子に続くピアノの逸材が登場した。すでに自己のトリオ作品として『ラヴァー・マン』(Venus)を発表済みのテラソンだが、ここではさらにスケール・アップし、詩情と躍動美に溢れた繊細な演奏を聴かせる
。
アビー・リンカーンといえば、マックス・ローチの元奥さんで、彼が打ち出していた60年代の黒人開放運動の一環としての“プロテスト・ジャズ”の先鋭的な一員というイメージが強かった私。
しかし、90年代にカムバックを果たした彼女の歌唱スタイルはずいぶんと変化していた。
年齢のせいもあるのは仕方がないことだが、やはり歌声には、かつてのハリはない。しかしその分、メロディをとても大事にしながら、じっくりと歌い上げる歌唱には心が揺さぶられる。
しみじみと歌い、じわじわと染み込ませる。
まさにベテランならではの表現力。
ヘンなたとえだが、この切々と心の中に訴えかけるようなアビー・リンカーンの歌唱は、場末の飲み屋で、若くもないし、美人でもないし、スタイルも良くないけれども、人生の酸いも甘いも経験しつくしたような“おばちゃんママ”の歌が、妙にささくれた心にじんわりと染みてくるような、なんだかそのような感じ。
永遠に朝がこないように感じられる夜の一人酒とともに。
また、さだまさしの《秋桜(コスモス)》のメロディが好きな人にもお勧め?!
1.Throw It Away
2.A Turtle’s Dream
3.Down Here Below
4.Nature Boy
5.Avec Le Temps
6.Should’ve Been
7.My Love Is You
8.Storywise
9.Hey, Lordy Mama
10.Not To Worry
11.Being Me
Abbey Lincoln (vo)
Roy Hargrove (tp)
Julien Lourau (ss,ts)
Rodney Kendrick,Kenny Barron (p)
Pat Metheny (g,elg)
Lucky Peterson (g,background vo)
Charlie Haden,Christian McBride,Michael Bowie (b)
Victor Lewis (ds)
track 1
Laurent Cuguy (String Arrangements)
Pierre Blanchard,Vincent Pagliarin (vln)
Frederic Fymard (viola)
Anne-Gaella Bisquay,Marc Gilet (cello)
track 3
Randoloph Noel (String Arrangements)
Sandra Billingslea (vln)
John Robinson (cello)
1994/05/29 & 11/07 & 08
Carnegie Hall Salutes The Jazz Masters(Verve) – Recorded April 6, 1994. Don Alias(Per), Tom Barney(B), Dee Dee Bridgewater(Vo), Ray Brown(B), Kenny Burrell(G), Betty Carter(Vo), Peter Delano(P), Al Foster(Ds), Charlie Haden(B), Omar Hakim(Ds), Herbie Hancock(P, Key), Roy Hargrove(Tp), Joe Henderson(Ts) Bruce Hornsby(P, Key), Antonio Carlos Jobin(P, Vo), J.J. Johnson(Tb), Hank Jones(P), Abbey Lincoln(Vo), Jeff Lorber(Vo), Christian McBride(B), John McLaughlin(G), Jackie McLean(As), Pat Metheny(G), Art Porter(As), Renee Rosnes(P), Stephen Scott(P), Jimmy Smith(Org), Gary Thomas(Ts), Kenny Washington(Ds), Vanessa Williams(Vo), Yosuke Yamashita(P), The Carnegie Hall Jazz Band: Randy Brecker(Tp), Earl Gardner(Tp), Lew Soloff(Tp), Byron Stripling(Tp), Slide Hampton(Tb), Douglas Purviance(Tb), Steve Turre(Tb, Shells), Dennis Wilson(Tb), Jerry Dodgion(As), Frank Wess(As), Alex Foster(Ts), Willie Williams(Ts), Gary Smulyan(Bs), Dennis Irwin(B), Special Guests: Don Sickler(Cond) – 1. Tea For Two 2. Tangerine 3. Shiny Stockings 4. Willow Weep For Me 5. I Must Have That Man 6. Desafinado 7. Manteca 8. Parisian Throughfare 9. How High The Moon 10. Turn Out The Stars 11. The Eternal Triangle 12. How Insensitive 13. Down By The Riverside 14. Yellow Stone 15. It’s About That Time 16. Now’s The Time
演奏自体がスローテンポで進行するので、フリーキーなトーンがより映えるというか、異質感を際立たせた演奏と響きます。
2曲目が有名曲”わたらせ”ですが、ここでも冒頭ピアノによる即興的な演奏が延々と続き、3~4分経過したところでお馴染みの旋律がおもむろに登場するような展開で、テンポはここでもゆっくりめで重厚感のある”わたらせ”が表現されます。
これまで(音源でもライブでも)自分が聴いてきた”わたらせ”とは一線を画するとでも言いたいような、ちょっと新鮮に聴ける”わたらせ”であります。
“見上げてごらん夜の星を”は、井上さんのテナーによるまっとうな演奏で始まりまして、これはストレートな分だけ
沁みる演奏になっています。途中、即興がちょこっと挟まりますが基本は、ストレートな演奏に終始して終了します。
そして、”Goodbye”。ピアノで冒頭近くから主旋律が提示され、2管がかわるがわる登場して旋律を奏でるこれもスローめなテンポ(これは、いつでもこの程度のテンポっすね(汗))で重厚感をたたえた演奏になっています。
最後に、林さんの高音でピロピロいうトーンからはじまるOVER THE RAINBOWの再演で締めくくられる。
スピードを通常よりスローテンポにしたものも含めて、スローな楽曲を集めていますが、演奏としてはフリー濃度は低めなれど侮れない熱さをもったもので、安易に気持ち良く音楽に浸るようなものではありませんでした。
さすがに、聴きごたえはしっかり持った(高値取引されるのも判る)好演盤でありました。
アーティスト/キャスト
森山威男
井上淑彦
吉野弘志
板橋文夫
林栄一
収録内容
1 虹のかなたに
2 わたらせ
3 見上げてごらん夜の星を
4 グッドバイ
5 虹のかなたに
豪快に咆哮しまくるジェームズ・カーター。
凄不思議なことに、あれだけ吹きまくりの《A列車で行こう》を聴いても、ウルサイという感じは全くせず、むしろとても爽快な気分になれた。これでもか、と吹きたい放題に吹きまくる彼のブロウは、たとえば同じ長尺ソロでも、コルトレーンの「内へ内へ」と向かってゆく、ある種の息苦しさとは対極の、開けっぴろげに「外へ外へ」と向かってゆく開放感を感じたからなのかもしれない。迷いの無い彼のサックスは、突き抜けた感じがし、清々しい感じさえした。ピアノのクレイグ・ティーボーンも、破茶滅茶っぷりも爽快だ。あるときはセシル・テイラー風だったり、またあるときはマッコイ・タイナー風だったりと、先人のスタイルを自在に行き来し、荒削りながらも威勢よくはっちゃけているところに好感が持てる。ブッ飛んだカーターのテナーには、これぐらい元気なピアノじゃないと面白くない。
あのサックス相手に、大人しいピアノでは、演奏が白けてしまう。テーマのメロディは無くとも、すぐに原曲が思い浮かぶ《アウト・オブ・ノーホェア》は、元気一杯で明るく爽やかな演奏。
《エピストロフィ》、《アスク・ミー・ナウ》と、モンクの曲を2曲も取り上げているのも嬉しい。そういえば、このアルバムは選曲が良いことに気が付く。つまり、《アウト・オブ・ノーホェア》を除けば、ジャズマンが作曲したナンバーで占められているし、そのどれもが、名曲ばかりなのだ。《A列車》のビリー・ストレイホーンをはじめ、コルトレーンに、クリフォード・ブラウン、そしてロリンズの《オレオ》も取り上げられているので、彼らのファンにとっては、たまらない人選、選曲といえる。ラストの素っ頓狂な音の跳躍を見せる《オレオ》が、お下劣一歩手前のユーモアがあって楽しい。凄まじいほどのテクニックと、聴き手を爽快な気分にさせる、元気一杯なこのアルバムの頃のジェームス・カーターが私は大好きだ。
最近は、妙に落ち着いた感じがしないでもないが。
?album data
JURASSIC CLASSICS (Diw)
– James Carter
1.Take The “A” Train
2.Out Of Nowhere
3.Epistrophy
4.Ask Me Now
5.Equinox
6.Sandu
7.Oleo
James Carter (ts,as,ss)
Claig Taborn (p)
Jaribu Shahid (b)
Tani Tabbal (ds)
1994/04/16-17
J-ジャズが誇る2人の巨人の、魂の語らい。ここには方法論も約束事も何もない。
【演奏者一覧】
ジェリ・アレン(p) ロン・カーター(b) トニー・ウィリアムス(ds)
【収録情報】
94年3月
ゾーンが自らのルーツ、ユダヤ伝統のクレッツマー(クレズマー)の旋律を全面的に押し出し、思わぬ効果をあげた『マサダ』シリーズの第一弾が、この『マサダ1』だ。
物憂げなマイナー旋律が特徴のクレッツマー(クレズマー)。この旋律が、鋭利なゾーンのアルトサックスが、スピード感抜群のリズムセクションに支えられ水を得たように疾走する特に、1曲目の《ヤイール》など、アルトサックスとトランペットの微妙なズレを意図したアンサンブルと、旋律、そしてスピード感は、オーネットとドン・チェリーのアンサンブルを彷彿とさせるものがある。オーネットファンは、《ヤイール》を聴いただけでも、一気に『マサダ』の虜になるのではないだろうか。語弊があるかもしれないが、まるで「エスニック・オーネット」。そして、クレッツマーの旋律と、ゾーンのアルトの音色がここまで似合うとは。
さらに、ジャズとユダヤ旋律はこれほどまでに違和感なく溶け込むものだとは。新鮮な驚き、と同時によく考えれば、ベニー・グッドマンやハリー・ジェイムス、ジギー・エルマン、スタン・ゲッツにしろ、作曲家のガーシュイン、アーヴィング・バーリン、リチャード・ロジャースにしろ、歌手のペギー・リーにしろ、ジャズにはユダヤ系が多いことは周知の事実(イタリア移も多い)。
ジャズの出自は黒人なのだろうが、それが洗練形作られる過程には、多くのユダヤ系の作曲家、演奏家たちの手を経てきたので、ある意味、ジャズとユダヤの親和性が高いのは当然といえば当然なのかもしれない。この『マサダ1』のもうひとつのポイントは、デイヴ・ダグラスのトランペットだ。彼のトランペットが絶妙にゾーンを彩る影となり、ときには前面に出、濃いコントラストと、奥行きを演奏に与えることに成功している。ゾーン以下、カルテットのメンバーが一丸となって突進してゆく様は、攻撃性高く、どこまでも鋭い。あたかも、ずっと以前からゾーンはクレッツマーを演奏しつづけてきたミュージシャンかと錯覚してしまうほど、ユダヤ伝統音楽と、ゾーンの前衛色強い音楽性の親和性は高かったのだ。シリーズ全10作まで続き、さすがに全部を丹念に聞き通すのは、かなり精神的にも疲れる作業ではあるが、音楽的充実度、演奏の卓越さはどれをとっても甲乙付けがたい。
『vol.1』が出たときは、新鮮さを感じると同時に「なるほど!その手があったか!」と、あまりにゾーンのサウンドとクレズマーとの親和性に妙に納得したものだ。最初に聴くなら、まずは『vol.1』からの入門をオススメしたい。
– John Zorn
1.Jair
2.Bith Aneth
3.Tzofeh
4.Ashnah
5.Tahah
6.Kanah
7.Delin
8.Janohah
9.Zebdi
10.Idalah-Abal
11.Zelah
演奏者
John Zorn (as)
Dave Douglas (tp)
Greg Cohen (b)
Joey Baron (ds)
94/02/24